「舌下免疫療法と歯科治療の注意事項」

舌下免疫療法(Sublingual Immunotherapy, SLIT)は、アレルギー性鼻炎や花粉症、アレルギー性喘息などのアレルギー疾患の治療法の一つです。この治療法では、アレルゲン(例:花粉、ハウスダスト、ペットのアレルゲンなど)を舌下に滴下または錠剤として投与することで、免疫系の反応を調整し、アレルギーに対する耐性を高めることを目指します。

舌下免疫療法は非侵襲的で注射を必要とせず、患者が自宅で簡単に自己管理できる特徴があります。療法は定期的に行われ、アレルゲンの投与量が徐々に増加していくことで、症状の改善が期待されます。

この治療法は特定のアレルギーが確定している患者に推奨されることが多く、症状が軽度または中等度の場合に効果が高いとされています。ただし、重度のアレルギー症状や他の健康上の問題を抱えている場合には、適切な評価と医師の指導のもとで治療を検討する必要があります。

舌下免疫療法を受ける際には、口腔内の清潔さを保つことが重要です。また、舌下免疫療法のスケジュールと歯科治療のスケジュールを調整する必要がある場合もあります。歯科治療がアレルゲン感受性を増加させる可能性があるため、患者の健康状態を考慮して治療計画を立てることが必要です。

舌下免疫療法中に口腔内に何らかの変化があれば、担当の歯科医師に報告し、適切な対応を受けるようにしましょう。歯科医師と免疫療法の担当医師が連携し、患者の健康と安全を確保するために最善の対策を講じることが大切です。治療中に不安や疑問がある場合は、遠慮せずに専門の医師に相談してください。

シダキュアは2018年6月末に保険適用を受け、2018年7月に販売開始された円形で木のマークが彫られている舌下錠です。

舌の下には粘膜があるため薬の吸収が早いです(飲むタイプの錠剤は30分舌下錠は2分)

シダキュアの「シダ」はCedar(スギ)、「キュア」はCure(治癒)という意味です。

シダキュアの成分は主にスギ花粉エキス粉末です。

このシダキュアには現在「2000JAU」と「5000JAU」の2種類があります。

このJAUは「Japanese Allergy Units」とよばれる、日本アレルギー学会が設定した日本独自のアレルギー活性の単位で、数値が大きいほど濃度が高くなります。

実はシダキュアが販売される前には、シダトレンという液体の薬がありました(現在は販売中止)。しかし冷蔵保存が必要で、液体の状態で2分間舌の下に保持しなければならない、少し使いづらい薬剤でした。

一方、シダキュアは常温で管理ができ、固体の状態で1分間舌の下に保持する薬です。そのため、保存も使用もシダトレンよりも簡易的になっていると考えられます。

シダキュアを使用した治療法は、「アレルゲン免疫療法」「舌下免疫療法」とよばれています。この方法はスギなどのアレルゲンを少しずつ、長い間投与して症状を緩和させる治療法で、小児にも有効です。

アレルゲン免疫療法には他にも「ミティキュア」(円形で五角形のマーク)というダニアレルギーのための薬があります。シダキュアとミティキュアの併用もされています。

シダキュアの年齢制限は定められていませんが、薬品製造企業は5歳以上を推奨しています。治療開始はスギ花粉が飛散してない時期で使用期間は約3〜5年です。

ミティキュアはダニアレルゲンのための舌下免疫療法の1つです。この薬を舌の下部に入れてゆっくり溶かして処方していきます。ただし歯科の抜歯や、歯周外科手術の場合、舌下免疫療法の薬が効きすぎてしまう恐れもあるので、注意が必要です。

シダキュア説明書の「重要な基本的注意」という部分に、抜歯後は口腔内の術後又は口腔内に傷や炎症がある場合には口腔内の状態を十分観察し本剤投与の可否を判断すること。(口腔内の状態においては本剤の吸収に影響を与える恐れがある。また本剤が傷が炎症部位に刺激を与える恐れがある)と記述されています。これはダニアレルゲン「ミティキュア」にも同様の内容が記載されています。つまり、歯周病の外科処置を行ったことで、傷口から薬剤が体内に入り、このような反応を起こしたと考えられます。

口の中に傷があれば同じことが起こりうるので、抜歯だけでなく外科手術やケガでも同様のことが起こる可能性はあります。特に奥歯付近でアレルギー反応が起こると粘膜が腫れて最悪窒息のリスクがある恐れもあります。特に子供は浮腫などが大きく出やすい傾向があります。

3月10日付けの読売新聞の「お口の健康情報室」という欄に以下のように掲載されています。以下引用。